長崎大学 情報データ科学部

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2022年05月06日
ディープニューラルネットワークと欠測データの代入法を組み合わせた乳がん検査の新たな方法の提案

 本学部のムトゥ スバシュ カビタ助教高橋 将宜准教授は、インド・ガンジーグラム農村大学のKanimozhi研究員とShanmugavadivu教授との国際共同研究で、乳がんを自動で診断できる新たな手法を提案しました。本研究で得られた成果はインパクトファクター付の学術誌「International Journal of Imaging Systems and Technology (John Wiley & Sons, Inc.)」に掲載されました。

 

■研究の背景
毎年、世界中で乳がんによって多くの女性の命が失われています。日本では毎年、約9万人以上の乳がん罹患者がおり、乳がんによって約1万5千人の命が失われています。一方,乳がんは早期に発見できれば「治るがん」ともいわれているため、がん検診は重要です。ところが、一般的にマンモグラフィーで使われている自動検査では欠測データ(観測されないデータ)を考慮できないため、診断結果の信頼性が損なわれるおそれがあります。

 

■研究成果の意義
本研究で提案された手法を使用することにより、欠測データを考慮することができるようになり、乳がんの自動検査が改善されると期待されます。その結果、乳がんの早期発見につながり、乳がんで失われる命を守ることに貢献できると期待されます。

 

■ポイント
  • 多層完全連結ディープネットワーク(MFCN: multilayer fully connected deep network)と欠測データの処理方法である代入法(imputation)を組み合わせることで、MdI-MFCN(missing data imputation with MFCN)という新たな手法を提案した。
  • 今回提案したMdI-MFCNは、既存の機械学習手法よりも優れた性能を発揮することが分かった。
  • 提案した手法による乳がん検査のための多層完全連結ディープネットワークモデルのワークフローは図1のとおりである。(注:MMデータセットとは、提案した手法を検証するために使用したデータセットの名称で、カリフォルニア大学アーバイン校の機械学習リポジトリから入手したMammographic Mass Data Setである。INbreastデータセットとは,提案した手法の信頼性を検証するために使用したデータセットの名称で、Moreira et al. (2012)で提供されているマンモグラフィーのデジタルイメージデータセットである。)
  • 提案した多層完全連結ディープネットワークの模式図は図2のとおりである。この図では、乳がんの特徴を分類するために入力層、隠れ層、出力層が含まれている。入力単位はネットワークに入力する生データである。隠れ層の関数は入力層と出力層の間で、入力データの活動を決定する。

 

図1:乳がん検査のための多層完全連結ディープネットワークモデルのワークフロー

図2:多層完全連結ディープネットワークの構造

 

■論文情報
論文タイトル:Data imputation in deep neural network to enhance breast cancer detection
掲載誌:International Journal of Imaging Systems and Technology (John Wiley & Sons, Inc.)
DOI(書誌情報):https://doi.org/10.1002/ima.22743

 

■著者:
Kanimozhi Ganesan:ガンジーグラム農村大学(Gandhigram Rural Institute)研究員
Shanmugavadivu Pichai:ガンジーグラム農村大学(Gandhigram Rural Institute)教授
Muthu Subash Kavitha(ムトゥ スバシュ カビタ):長崎大学情報データ科学部 助教
Masayoshi Takahashi(高橋将宜):長崎大学情報データ科学部 准教授

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